片麻痺とは全身の筋緊張がアンバランスに

麻痺になられた方は、発症当初は、麻痺側の肩・腕に痛みがなかったという方も多いと思います。それがリハビリに励んでいく中で、肩・腕などに痛みが生じる事があるのではないかと思います。

これは、脳梗塞・脳出血による半身麻痺は、筋緊張の異常が全身に影響を及ぼす障害であるという事に起因します。

麻痺した半身(麻痺側)と動く半身(非麻痺側)のアンバランスな状態で、様々な活動に力を入れて行う事により、麻痺側をはじめ、非麻痺側、頸・体幹など、全身の筋緊張に変化が起きていきます。

肩・腕(上肢帯)の特徴

それがなぜ麻痺している肩・腕の痛みにつながるのでしょうか?

人類は手の発達によって、進化と高度な知能を獲得したと考えられています。それだけ微細な動きと感覚を持っているのです。

上肢帯とインナーマッスル

その手を支える肩・腕は、上腕骨・肩甲骨・鎖骨という三つの骨で構成されます(上肢帯)。さらに肩甲骨は、胸郭(脊椎・肋骨・胸骨の総称)と接しています。また最も大切な頭を支える首(頸椎)とも隣接しています。

様々な筋肉が絡み合う上肢帯

この上肢帯(肩)は、とても自由度の高い関節です。腕を上げる下げる・左右に動かす・捻る・回す・突き出す・引き込むなど、様々な動きが可能です。例えば、指や膝は曲げ伸ばしだけですし、手首足首と言ってもグルグル回せる程度です。股関節であっても上肢帯ほど複雑な動きができる訳ではありません。上肢帯の靭帯や骨の形状も、この自由な動きを確保する為の構造となっています。

ここで大事なのは、その自由度を確保しながら「安定」させる為に、様々な筋肉の集まりによって構成されているという事です。

すなわち上肢帯は、「筋肉の集まりで安定している部位」という特徴を持っています。

これはすなわち、「筋緊張の影響を受けやすい構造」になっているとも言えます。

肩・腕に痛みが出る理由

アンバランスな状態で動くことが痛みに…

前述の通り、脳梗塞・脳出血の半身麻痺は、筋緊張の異常が主な障害です。発症直後は、シンプルに「動く側(非麻痺側)」と「動きにくい側(麻痺側)」に分かれた状態とも言えます。しかし、そのアンバランスな身体での活動、すなわち、麻痺側をかばう為に、非麻痺側で無理に動く事によって、非麻痺側も異常な筋緊張になる。また、その影響が麻痺側に更なる異常筋緊張をもたらすという悪循環が生じます。その「異常筋緊張の悪循環」が、多様な筋肉でつながっている上肢帯は影響を受けやすく、関節の崩れを引き起こし、痛みを生じやすいものと考えています。

すなわち、肩・腕の痛みは、全身の筋緊張異常の、「はけ口」のような意味合いがあると言えます。

痛みを改善し、動くようにする為には

ですから、全身の筋緊張を、正常に近づけていくことにより、「はけ口」の肩・腕の痛みを改善する事ができます。

また、全身が正常に近づくのですから、段々と上肢の麻痺の改善にもつながっていくのです。

リハビリ動画

あくまでリハビリの雰囲気を知る、参考としてご覧ください。実際はより慎重に痛みを出さない範囲で、リハビリを進めて参ります。